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レスリーは32歳の女性。彼女が2歳の時に父親が泥酔運転をしていて大事故を起こし、生死をさまよった後、一命を取り留めたのだそう。でもそのせいで、彼女は脳にダメージを受けてしまった。 一番最初のクラスの時に、レスリーは"私は知的障害がありますが、他の人と比べると遅いだけ。分からない事もあるかもしれないけれど、私は決してバカではないの"と教えてくれた。 ゆっくりと、そして独特な話し方をするものの、自分の意思を伝える事が出来るし、知的障害だと言っても、英語の難しいスペルの単語をスラスラ書いていたので、"あなたが今書いた単語は、日本人の私が書く時はスペルが正しいかどうか、ちょっと考えないといけないのよ"と伝えて、誰にでも弱点はあるけれど、それを克服して前に進んで行くのは素晴らしい事だと、機会があるたびに言うようにしている。 レスリーはアートの他にも取っている全ての教科に助けが必要で、それぞれに指導員を雇っている。中でも数学の指導員はとても意地悪らしく、知的障害を持っている事を軽蔑して中傷するような暴言を何度も吐いているらしい。 "それは誰なの?教えてくれたら、上の人に報告するから"と私が言うと、"それはしなくて良いの。ただ、そうやって呼ばれると、とても傷つくのよ"とレスリーは、ゆっくりと、そして悟ったように言い、"でもね、そう言う事って、言った人に帰ってくるのよね"とポツリと言った。 それを聞いて、レスリーは心が本当にピュアな人なのだと思った。 私がレスリーに教えているのは、デザインのコンセプト。今回のテーマは対称と非対称。これらを理解して、そのコンセプトに基なったイラストを書くのだけれど、彼女にとって、その対称法を使って作品を作る作業は難題だった。それでも、精一杯、時間をかけて、本当にがんばって描いたのは、ニコニコ顔のかわいい蝶々。 どう見ても、アメリカの小学校低学年の子供が描きそうなタイプの、お絵かき程度の作品だけど、対称法を理解して、この蝶々をクリエイト出来たレスリーを褒めてあげた。 もしかして、彼女にだけ蝶々がこんな風に見えているのかもしれないし、もしかしたら蝶々の本当の姿はこれかもしれない。
by ConnieWest
| 2007-03-16 21:55
| -ART
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